群青の月
「それで……話って?」


あたしの様子を察したのか、吉岡さんが遠慮がちに切り出した。


運ばれて来たコーヒーの香りが、湯気と一緒に鼻先をフワリとくすぐる。


それを一口飲んだ後、息を小さく吐いてから口を開いた。


「あたしね、今日引っ越すんだ」


「え?」


目を見開いた吉岡さんが、すぐにパチパチと瞬きを繰り返す。


「だからもう、一緒に仕事をする事もないと思う。派遣は辞めないけど、この近辺では働けないから……」


あたしは眉を寄せながら小さく笑って、ゆっくりと付け足した。


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