群青の月
「大丈夫だよ」


平静を装った顔に不安が混じってしまいそうで、誤魔化すように笑顔を見せる。


「今までだって、ずっと一人だったようなもんだし……。別に、あんまり変わらないから」


「そう……。ねぇ、時々電話してもいいかしら?」


控えめな質問に、今度はちゃんとした笑みを零して頷く。


それから立ち上がろうとした時、ふとある事を思い出した。


「あのさ……」


「なぁに?」


柔らかく細められた瞳を見つめ、ほんの少しだけ戸惑いながら続きを紡ぐ。


「……だし巻き卵の作り方、教えてくれないかな?」


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