群青の月
それから15分もしないうちに、吉岡さんとカフェの前で別れた。


相変わらず雑踏で埋め尽くされた街は、新年を迎えばかりだからなのかいつもに増して賑わっている。


だけど…


不思議と、今はもうこの街が汚れているとは思わなかった。


すれ違う人達の姿に冬夜の面影を重ねて、つい振り返ってしまう。


そんな事を何度も繰り返して…


その度に大きくなっていく寂しさにも心細さにも、敢えて気付かない振りをした。


だって…


そうしないと、この胸を抉るような痛みに耐えられなくなってしまいそうだったから――…。


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