群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
夜の街を見下ろすには、少しだけ高さの足りないビルの一室。
その窓際でぼんやりと外を眺めていると、近付いていた足音が後ろで止まった。
「何だ、兄貴か……」
「お前、まだ残ってたのか」
俺の隣に立った兄貴が、呆れたような顔をしている。
「あぁ。でも、もう帰るよ」
「企画でも考えてたのか?」
「あれだけの雑務に追われてたら、企画どころじゃねぇよ。わかってるくせに、いちいちそんな事訊くなよ」
ため息混じりに返すと、兄貴はどこか楽しそうに喉の奥でクッと笑った。