群青の月
「……それで?」


兄貴はため息混じりに意味深な笑みを浮かべ、わざとらしく窓の外に視線を遣った。


「何が?」


投げ掛けられた疑問の意図がわからなくて、首を傾げる。


すると、兄貴が俺を見た。


「お前にそんな顔をさせるのは、どんな女なんだ?」


「え?」


さっきよりも目を大きく見開くと、兄貴が眉を寄せて笑った。


「男がそんな表情(カオ)をする時は、大事な女のせいって決まってるんだよ」


「そんな決まりないだろ……」


「……誤魔化しても無駄だ。お前の事くらい、お見通しだからな」


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