群青の月
「残念だけど、今日はアンタが喜びそうな物はないよ」


小さく笑って袋を地面に置くと、バランスを崩した中身がバサッと出て来た。


「あ〜ぁ……」


ため息をついて落ちた物を拾おうと手を伸ばした時、視界に入って来たのは袋の中に残っていた豆腐。


「豆腐……。トーフ、とか?」


ポツリと呟くと、相変わらず尻尾を振ったままの子犬が首を傾げるようにして、あたしを見上げた。


「……アンタ、白いしね」


「アンッ!」


そう言ったあたしに応えるかのように、嬉しそうな鳴き声が響いた。


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