群青の月
それからしばらくして、寒空の下にトーフだけを残す事を申し訳なく思いながらも、部屋の中に入った。


その瞬間、あたしの鼻をくすぐるのは優しい香り。


冬夜の事を考えると、胸の奥がギュッと締め付けられて苦しくなるのに…


この部屋に広がるのは、彼が愛用していた香水の香り。


自ら涙を誘い出すような事をするあたしは、きっと救いようの無い程のバカなんだと思う。


それでも、匂いだけでも冬夜を感じていたかった。


「冬夜……」


冷えた頬を濡らす温もりを手の甲で拭って、胸の奥を締め付ける香りが染み付いたベッドにそっと顔を埋めた――…。


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