群青の月
◆Side‥冬夜
【Side‥冬夜】
就業時間が過ぎたオフィスで雑務に追われていた俺のデスクに、不意にコーヒーの入ったカップが置かれた。
「何が欲しい?」
「は?」
見上げた先にいた兄貴に首を傾げ、カップに手を伸ばす。
「誕生日プレゼントだよ。明日だろ、誕生日」
返って来た言葉に真っ先に浮かんだのは、柚葉の顔だった。
「お前の企画も本格的に進める事になったし、誕生日とのダブルで祝ってやるよ」
俺はそれを掻き消すように苦笑して、コーヒーを飲んだ。
「……遠慮しとくよ。別に欲しい物なんてないからさ」