群青の月
ほとんど初対面のような人を相手に、こんなにも素直な気持ちを話せるのはどうしてだろう…。


そんな事を考えていると、吉岡さんが柔らかく微笑んだ。


同時に、さっきまでの緊迫した空気がフッと緩む。


「二人して、すごく不器用なのね……」


少しだけ呆れたように、だけど優しい声で落とされた言葉。


「え……?」


首を傾げる俺を余所に、吉岡さんはバッグから手帳を取り出し、そこに挟んであったメモを差し出した。


「柚ちゃんの家の住所よ。私はもう手帳に控えてあるから、これはあなたにあげるわ」


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