群青の月
◇Side‥柚葉
【Side‥柚葉】
子犬をトーフと名付けた翌朝、あたしは少しだけ腫れぼったくなった目をメイクで隠して、重い足取りで家を出た。
「おはよう、トーフ」
「アンッ!」
寒空の下だというのに、トーフは相変わらず嬉しそうに尻尾を振っている。
ケースに子犬用のペットフードを入れて、トーフの頭を優しく撫でた。
「すぐに帰って来るから、いい子にしててね」
家で飼ってあげられないのにこんな事を言うのは、すごく無責任なのかもしれない。
申し訳なさを抱きながらトーフの頭をもう一度だけ撫でた後、バイト先に向かった――…。