群青の月

◇Side‥柚葉


【Side‥柚葉】



子犬をトーフと名付けた翌朝、あたしは少しだけ腫れぼったくなった目をメイクで隠して、重い足取りで家を出た。


「おはよう、トーフ」


「アンッ!」


寒空の下だというのに、トーフは相変わらず嬉しそうに尻尾を振っている。


ケースに子犬用のペットフードを入れて、トーフの頭を優しく撫でた。


「すぐに帰って来るから、いい子にしててね」


家で飼ってあげられないのにこんな事を言うのは、すごく無責任なのかもしれない。


申し訳なさを抱きながらトーフの頭をもう一度だけ撫でた後、バイト先に向かった――…。


< 907 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop