群青の月
段ボール箱を持って部屋に入ると、途端に優しい香りがあたしを包む。


そうなるように仕向けているのは、他の誰でも無く自分自身なのに…


今は鼻をくすぐる香りが、いつもよりもずっと切ない。


トーフもいなくなった今、母を家族として認める事が出来ないあたしは、本当に一人ぼっちになってしまった。


“寂しい”って感情が、こんなにも苦しいものだなんて思いもしなかった。


温もりや愛を与えてくれた、冬夜…。


そして…


それを知ったあたしの心は、冬夜と離れる事で寂しさや切なさまでも覚えてしまったんだ…。


< 912 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop