群青の月
真っ白な体に手を伸ばし、子犬を抱き上げた。


「お前、どこの子?」


つい話し掛けてしまった自分に苦笑しながらも、その愛くるしい表情に心が和む。


「お前の隣の住人、どこに行ったんだ?」


独り言のように呟きながら、箱の中に子犬を戻す。


すると、子犬はどこか嬉しそうにブランケットに包(クル)まった。


その瞬間、鼻先をフワリとくすぐったのは、よく知っている香り…。


それが、自分が愛用している香水と同じ匂いだって事に気付いて…


同時に、この子犬の飼い主は柚葉なんだと確信した。


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