群青の月
◇Side‥柚葉
【Side‥柚葉】
柔らかな陽射しが降り注ぐ4月、冬夜と出会った頃と同じ季節がやって来た。
満開に咲き誇る桜を纏う木は、淡く優しいピンク色の花びらをまるで雪のように降らせている。
「トーフ!花びら食べちゃダメだって!」
道を埋めるように落ちている花びらに口を近付けたトーフを慌てて抱き上げ、口を開けさせて花びらを取り出す。
「もう……。何でこんな物食べるの?」
「クゥ〜ン……」
「そんな顔してもダメ。昨日も叱ったばっかりなのに、もう忘れたの?」
トーフは耳を垂れて、不思議そうに首を傾げた。