群青の月
上司は、俺が畑野に企画を盗まれた時に力になれなかった事に対して、『悔やんでいる』と言いながら謝罪して来た。


だけど…


俺にとっては、それすらも“今更”だった。


だって、今は畑野との一件があったからこそ兄貴の会社に就職する事が出来たんだと、前の会社を辞めた事をプラス思考に捉えているくらいだから…。


いつの間にか、あれ程こだわっていたあの会社での肩書に対しても、全く興味も未練も無くなっていた。


柚葉が傍にいてくれる事はもちろん、兄貴とちゃんと話せた事や両親の優しさに触れた事も、きっと大きかったと思う。


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