群青の月
「ありがとうございました」


笑うと笑窪(エクボ)が出来る中年の女性店員は、俺の母親とどこか似ている。


そんな事を考えながら小さく笑って、紙袋を受け取ってから店を後にした。


恐らく待ちくたびれて苛立っているであろう柚葉を、これ以上怒らせないようにと車に急いだけど…


「遅過ぎ……」


ドアを開けたのと同時に、彼女が不機嫌な声を漏らした。


「ごめん」


「謝られても、時間は戻らないんだけど。てか、絶対悪いと思ってないじゃん」


不服そうに眉を寄せた柚葉に、俺は小さな笑みを向けた。


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