群青の月
期待がこもった気持ちの中に、ほんの少しだけ混じっている緊張感。


視線を伏せるようにして歩いていると、半歩先を歩いていた冬夜が急に立ち止まった。


「柚葉」


「……見える?」


振り返って柔らかく微笑んだ冬夜に、緊張気味に尋ねた。


すると、彼は微笑みを崩さずにゆっくりと頷いてから、目の前にある山の右上の辺りを指差した。


「ほら、あそこ」


まるで、初めてここに来た時の事を再現するように…。


あの日と同じように冬夜の指先を追うと、そこには確かに白い月が浮かんでいた。


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