群青の月
「不思議だよな……」


「え……?」


さっきは月から離せなかった瞳が、今は冬夜に囚われる。


「あの時は、こんな風に柚葉と一緒にいる自分なんて想像すらしなかった。だけど……」


あたしを見つめる瞳がフワリと緩められ、優しい弧を描いた。


「今は、柚葉がいない未来の方が想像出来ないんだ」


その声に込み上げて来たこの愛おしさは、どんな言葉を遣えば伝わるんだろう。


想いを言葉に出来ない事が、すごくもどかしいのに…


この感情を言葉にしてしまうのは、何だか勿体ない気がした。


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