そして、恋をする。
「裕子!!何やってんの?」

「んー?何が?」

「何で教科書なんか読んでるの?」

「別にー。先生遅いなって思って。」

「確かに、今日先生遅いねー。」


はぁ。

やっぱり
彩夏も変に
思ったか…。


何で教科書なんか
読んでんだろ。



ばかばかしくなり
教科書を閉じ、

机に
突っ伏せる。



ガラ…。



「すまん。遅くなった。日直!」


先生、登場。


「起立!礼!」



この時ほど、
坂口君の大きさを
実感することは
無い。


視界が
坂口君で
覆い尽くされる。




ゆっくり
着席する。


坂口君が暑いのか、
下敷きで
一生懸命
扇いでる。


私のところまで
風が来る。



…寒い。



嫌味に、
大きくため息でも
ついてやろうかな。


そう思って
息を大きく
吸い込んだ時、




坂口君の
匂いがした。






晴れた日の
木の匂い。





この匂い
いいな。


そう思った。



ため息を
つくのを忘れ、


目の前の
大きい背中に
そっと
顔を近づけた。
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