そして、恋をする。
「前に机に指はさまれた時…」

「うん。」

「なんか怖いなって思った。」

「怖い?」

「うん。なんか一瞬しかとされたと思って…。」

「しかとされて、怖いと思ったの?」

「うん。」

「何で?」

「なんか…嫌われてるのかなって思って…。」


うまく言葉に
出来ない。


でも彩夏は

つたない
私の言葉を

何とか
汲み取って
くれているらしい。


しばらく
彩夏は黙っていた。



な、なんだか
…怖い。



何が言いたいのか
分からない。

彩夏の考えが
分からないなんて
初めてかも
しれない。


「それさ…やっぱり…」

「やっぱり?」

「坂口君の事好きなんじゃないの?」


結果それ?!

またそんな事言って!


そう冗談っぽく
言おうとした。

けど、

彩夏の目は
冗談のそれでは
無かった。


「さ、彩夏…?何で?」

「私が、大西君に思ったり、感じたりすることはね。
しゃべりたい。
視界に入っていたい。
考えてもらいたい。
気づいて欲しい。
見ていたい。
…たくさんある。

もちろん好かれたい。愛されたい。

けど、その前に、絶対に、嫌われたくない。

私は、そう思う。」


背中に
汗が一筋流れた。


「ねぇ。裕子は坂口君にそう感じたことない?
知ってる?裕子ね。坂口君のこと、いつも目で追ってるんだよ?」





そうなの?


私、いつも
坂口君を
目で追ってたの?


私、
坂口君のこと、
そんなに
気にしてたの?


私…
坂口君のこと…







「それが“恋”って言うんじゃないかな。」
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