そして、恋をする。
「そうだよ。恋だよ。」

彩夏が
私の言葉に
深く頷く。

「坂口君の事…好きなのかな?」

「それは、自分に聞けばわかるんじゃない?」

「自分に…?」

「うん。あ、今日はもう帰るわ。ピアノの時間!じゃ、また明日ね!」

「あ。ばいばい。」

あっという間に
彩夏の姿が
視界から
消える。


しばらく
ブランコに座って
考え込んでいた。


私は
あまり強い感情を
持ったことが
なかった気がする。


それは自分が
幸せだからだと
思っていた。


でも、
違うのかな?


「うーん。」


過去を
思い出してみる。


強い感情? 



彩夏に出会えて、
本当によかった。


その気持ちは
本当に強いはずだ。

けど、

彩夏が
当り前のように
近くにいる今は、

その気持ちを
心から
感じては
いないだろうと思う。


学校が離れて
初めて本当に
大切だったことを
再確認するんだろうな。


そう思う。


けど…


その前、

小学校より
前の記憶。



幼稚園。

保育園…。

あまり
思い出せない。





違う。


全く
思い出せない。






「何で…?」
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