そして、恋をする。
「沢村さん…?」

「は、はい!」


かなり不自然な返事
しちゃったー…。


「よかった。名前間違ってたらどうしようかと思ってた。
私、小林梓。よろしくね。」

「こ、こちらこそ。あ。沢村裕子です。えっと…小林さん?」

「あはは。梓でいいよ。沢村さんは?」

「あ…裕子でいいです。」

「OK!そう呼ぶ!」


すごく気さく。
いい子だな。

そう思った。


キーンコーン…


授業が始まる。

小林…じゃなかった。
梓さん…。

横顔が
凄く綺麗。

こんな女の子なら、
男の子はみんな
イチコロ
なんだろうな。

思わず
見とれてしまう。

こ…梓さんが
視線に気づいて
こちらに振り向く。

ニコッと笑って
また前に
向き直った。


勝てないな…


そう思った。


坂口君…。
梓さん…。

お似合いだ。

悔しいけど、
凄く似合う。


少し涙が
浮かんできた。

…もう諦めようか…。

多分、梓さんは
坂口君が
好きなんだと思う。

私の気持ちに
感ずいて
声をかけたのだろう。

だから、
これ以上は好きに
なっちゃいけないんだ。



キーンコーン…



授業が
終わってしまった。

全く授業に
集中できなかった。


「起立!」


日直の声が響く。


ガタン…


大きな椅子の
音が教室で響く。


けれど、
その中で、

私の前でゆっくり
椅子を引き、
狭そうに立ち上がる
彼がいた。


あ。


前に私が指を
挟んだから…。

気にして
くれてたんだ。

ずっと…。

気づかなかった。


ずっと
意識してくれて
いたんだ。




愛おしい。



坂口君が
すごく
愛おしい…。




忘れるなんて

私には

もう出来ない…。
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