そして、恋をする。
諦められない…。



そうはっきりと
意識した瞬間。


ぼろぼろと、
涙が零れ落ちた。


休憩時間になって
彩夏が
私の席にやってきた。

うつぶせている
私を見て、
声をかける。


「寝ちゃ駄目よー。」


顔を上げない
私を見て、
すぐに感づく。


「裕子…?」

「…。」

「まさか…泣いてる?」

「…。」


彩夏はそのまま
黙って、
私をトイレに
つれていった。


「何?何かあった?」


心配そうに
私の顔を
覗き込む。


「ごめん。もう…大丈夫。」


涙が止まり、
やっと返事を
返す。


「もうちょっと待って…。もう少ししたら全部話す。」

「分かった。私はいつも味方だからね。」


私の気持ち。

坂口君への
この思い。

止められない。

けれど、
止めなければ
いけないものなのか。

止めなくても
いいものなのか。


自分で
答えを出して、

それから
彩夏に
聞いてもらおう。







次の授業が
始まる。

教室に戻る。


彩夏は
私の背中を
そっと撫で、

自分の席へと
戻っていった。


もう涙は止まった。



前を見る。

大好きな背中。


これから
どうしよう。


背中を見ながら
考える。


その時、


その背中が
くるりと動き、

坂口君の顔が
こちらを向く。


「…大丈夫か?」

「え…?」

「…。」

「あ…大丈夫…。」

「ならいい。」


何で…?

いつも冷たいのに、
どうして
こんな時だけ
優しいの?

どうして
私が泣いてたのを
知ってるの?

どうして
諦めさせて
くれないの?



どうして…!!



悔しかった。

諦められないのを
見透かされて
いるみたいだった。



止まっていたはずの
涙がまた、
じわりと滲み
鼻の奥がツンとした。
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