そして、恋をする。
「ねぇ、坂口。そういや部活はどうしたの?」


小林さんが
坂口君に
話しかける。


「関係ないだろ。」

「何それ。ひどくない?!教えなさいよ。」

「…まだ決めてねーよ。」


相当
めんどくさそうに
ゆっくりと答える。


「ふーん…」


小林さんが
坂口君の反応に
追求を諦め、

急にこちらに
視線を移した。


「裕子は?」

「は、はい?!」

「部活はもう決めた?」

「わ、私?私は多分テニス部に…。」

「そうかー。それもいいねー。」

「こ…あ、梓さんは決めてないの?」

「呼び捨てでいいよ。うん。まだなんだー。」

「じゃあ、梓…ちゃん。梓ちゃんは…」

「あはは。それでいいよ。何?」

「運動部にするの?」

「そのつもり!早く決めないとまずいなー。」


私と小林さんの
会話は
そこで終わった。

ほんの30秒程度。

けれど、
額に汗が滲むほど
緊張した
30秒間だった。


横では
もくもくと
お弁当に一生懸命な
坂口君がいた。


お弁当…
よく食べるな。

細いのに、
すごい食欲…。


いつの間にか、
私と坂口君以外で
部活トークが
繰り広げられていた。



自分のお弁当に
手を伸ばす。



お弁当を
少しずつ
かみ締めて
食べながら、

横目で
坂口君の横顔を

こっそり
盗み見ていた。




初めて見る
横顔だった。
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