そして、恋をする。
「あらー!派手に切ったわねー!」

「…すいません。」

「謝る事じゃないわよ!痛いのはあなたなんだから。それより、病院行ったほうがいいわね。気分は?悪くない?」


ずいぶん
明るい調子で
私の手を見つめる
保健室の先生。

なんだか
大した事
ないような気が
してくる。


「あ、いえ…。大丈夫です。それより、先生…。」

「何?」

「病院…行かなきゃ駄目ですか?」


しかし、
私のこの一言に
先生の顔が歪む。


「…あんた、血が止まってないのに、ずいぶんのん気ね。多分縫うわよ、この傷。」

「縫う?!」


思わず
耳を疑う。

隣にいた彩夏も
顔が真っ青に
なってしまっている。


「…とりあえず、そういう事みたいだから、
5時間目の先生に言っといて。ごめんね。」

「う、うん。分かった。
じゃあ病院まで付き添うから、先生には今言ってきちゃうね!」


引きつった笑いを
浮かべながら
彩夏が保健室から
足早に出て行った。

確か彩夏は
あんまり血が
得意じゃなかった
気がする…。

昔バイクの
事故を見たとかで…


それにしても、

縫うのか…。


初めての経験だ。

少し不安もある。


でも、何で?

何で指が切れたの?



ガラッ…



ドアの開く音。


「彩夏?!早かったねー。」


そう言って
振り向くと、



そこには



彩夏ではなく


坂口君の
姿があった。
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