そして、恋をする。
「先生に知らせて来たよー。」

「ありがと、彩夏!」

「さ、病院行くわよ。先生の車乗って!」


学校の裏にある
駐車場で
小さくて赤い
車に彩夏と乗り込む。


「5分もあれば着くから。」


そう言って
軽快に車を
走らせていった。

後部座席で
彩夏に耳打ちする。


「…さっきね、坂口君きたんだよ。」

「!!何でー?!」


彩夏が
目を見開いて
車内で大声を出す。

慌てて口を
押さえようとしたが
手遅れだった。


「ちょっと!うるさいわよ!」

「すいませーん。」


彩夏が口を
尖らせる。


「で?何で?凄ーい!!」

「いや、それがね…」


ひそひそと
話し始める。


昼ごはんを
忘れてしまった事。

昼休みに坂口君が
言ってもいないのに
パンを買ってきて
くれたこと。

そのパンを
食べてた時に
指が切れたこと。


全部をざっと
話す頃には
すでに病院の駐車場に
着いていた。


「それ凄い話だねー!!興奮しちゃうわ!」

「彩夏が興奮するの?!おかしいー。」


病院でも
ずっとその話題で
盛り上がっていた。


「沢村裕子さん。」


病院で名前を
呼ばれると
何故か緊張する。


彩夏が私に
頑張れのウインクをして、
手を振ってくれていた。


初めての麻酔は



痛かった…。


麻酔すれば
痛くないって
言うけど…。

麻酔が痛いよー…。

半泣き。



しかし
4針縫って、
すぐに
病院を脱出できた。




服に病院の
薬品の匂いが
こびりついているようで

なんだか
気持ちが悪かった。
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