そして、恋をする。
「でもさー、坂口君ってば。病院付き添ってくれてもいいのにね。」

「えぇ?!」


彩夏がすんごい
事を言い出した。


「いやいや!だって坂口君関係ないし!」

「でも、自分が怪我に関係してるかもって思ったなら、
来てくれてもいいのにーって思うけどなー。」




まぁ、自分が
坂口君の立場に
なったとしたら、

相手が坂口君じゃ
なくても、
病院ついてくかも…。


「で、でも保健室まで来てくれたし!」

「まーねー。」

「わ、私はそれで十分だから!」

「ふーん…。まぁいいけどさー。」


…。

そんな事言われると
さっき保健室に
来てくれたのも

自分に疑いが
かかったから
確かめに来ただけで、

私を心配しに
来たわけじゃない…

って結論に
行き着いてしまう。


うぅ…。

なんだか、
気づきたくなかった…。


その日は
学校に着いたのが
放課後に
なっていたので、

自分たちの
荷物だけとって、
保健の先生に
家まで送ってもらった。

ちょっとラッキー。


彩夏も
車での帰宅に
はしゃいでいた。


大西君だったら…。


彩夏を見ながら思う。


怪我したのが
彩夏で、

坂口君の立場に
大西君を当てはめたら、

多分大西君は
病院に
付き添っただろう。


多分大西君にとって
まだ、彩夏は
特別な存在ではない。

彩夏の気持ちにも
全く気づいていない。


けど、


それでも
友達として
彩夏の身を案じて、

それなりに
責任を感じてしまって

病院に付き添うだろう。







部屋から
見上げた月が

雲に隠れ
ぼやけて見えた。
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