そして、恋をする。
耳は先生の話。

目は黒板。



けど、

目の端で

ずっと

坂口君を
見てた。



さらさらと走る
シャーペンの動き。

黒板を見るときに
少しゆれる前髪。

消しゴムを荒々しく
使う彼の手。

疲れるとあごに
手をあてる癖。



全部
見ちゃってた。


歴史が好きに
なれそうだった。


授業が終わると
無言でノートを
私に差し出し、

友達の元へと
行ってしまった。


「ねぇ!今坂口君になんかもらってなかった?」


彩夏だった。

休み時間になった
途端に
私の机に
やってきた


「ああ!ノートだよ!昨日の五時間目の分も貸してくれたから彩夏もコピる?」

「あ…!そういえば、そっか!」


彩夏も昨日の
五時間目の
ノートの事なんて、

すっかり
忘れていたらしい。


「これ…借りたの?」

「うん。ってか、貸してくれた。」

「マジ…?」

「うん。なんか貸してくれる気だったみたい。」

「へぇ…。坂口君って意外にいいやつだね。」

「意外は余計だけどね。」


そう言いあって
お互い笑い合う。


なんだか
少し


照れくさかった。
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