そして、恋をする。
「あ!でも!!これはチャンス?!」


ふと
ひらめいてしまった!


「何よ。裕子。」

「ノート、大西君に頼めば?」

「な!」

「坂口君のノートは貸してあげない♪」

「無理無理!!おかしいじゃん、そんなの!」


彩夏の顔は
真っ赤になっていた。


「別にいいじゃん。なんとなくを装って…ね?」

「えー…。不可解…。」

「いいから!ファイト!ほら、ちょうど大西君今通るよ!言えー!」


小声で叫ぶ。


「う…。」


彩夏のうめきと
同時に
大西君と
目が合う。


「あ。沢村さん。昨日昼どうかした?」


大西君が
突然
話しかけてきた。


「あ…ああ。ちょっと怪我しちゃって…。」


少し動揺しつつ
笑顔で返す。


「ふーん。怪我してたんだ。
昨日思い切り走って、俺の椅子にぶつかっていったのに、
それも気にせず廊下に飛び出していったから何事かと思ったよ。」

「ああ。ごめん。」

「それに、その後清水さんも飛び出していって、
五時間目も二人ともいないし。」


“清水さん”の単語に
少し顔を赤らめながら
彩夏が話し始めた。


「私は裕子の病院に付き添ってたの。
…あのね。それで大西君に頼みがあるんだけど…。」

「何?」


大西君は
彩夏の顔を
覗き込むようにして
返事を返す。


「昨日の…五時間目の…ノート…貸してくれない…?」


ますます俯いて
彩夏が
大西君に
言った。



女の子から
見ても
ドキッとするぐらい

彩夏の顔は
幸せで満たされていた。
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