そして、恋をする。
「おい。」



顔を上げると
しまわれたはずの
ノート。


「冗談だよ。」


にこりともせず、
私の机に
ノートを置いた。


「あ、ありがとう。」


目の前に
大きい背中が
着席する。

何が起こったか
まだはっきりと
理解できない。


けど、


怒ってない…?


借りても
大丈夫なんだ…
よね?


「おい。」


再び
呼びかかられる。


「悪い。」

「な、何が?」

「嘘だよ。怒ってないから。」

「あ…。」

「…。」

「私、そんなに怒られたって顔してる?」


なんだか
うまく笑えない。

口が
固まっている。


「…すげー不安そうな顔してる。」


赤面。


恥ずかしい!

坂口君に
そんなに顔に
出てたのが
ばれてたの?!

彩夏も
言ってた。

裕子は
顔に出るって。


「じょ、冗談でもショックだったんだもん!」


そう言って、
顔をそらした。



「悪い。笑うかと思ったから。」



そう言って
坂口君は
前を向いた。


と同時に
先生が入ってくる。


笑うと思った…。




また必死に
ノートを取る
坂口君の背中を

授業が終わるまで、
不思議な気持ちで
見つめ続けて
しまった。
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