切なくて、切なくて
「穂乃香はさー、本当に好きな人いないの?」
帰り道、夏希からの質問。
解答につまるけどこの気持ちを誰かにいいたかった。
好きな人のことって
なんでか人に話したくなるもんだよね?
「いるよ。
気になってるだけだけど」
少し顔が火照る。
好きな人のことなんて話したことがないから。
「へ!?誰、誰?」
夏希の顔が、ぐっと近づく。
「K.Yさん」
いきなり名前をだすのは抵抗があったからイニシャルだけ言う。
「えー……
あ、わかっちゃった」
そう言って夏希は微笑んだ。
「サッカー部で、うちのクラスで、茶髪のーー…?」
微笑みは、意地悪そうなニヤつきに変わる。
「優也でしょ」
見事に当てられた。
夏希はなんでもお見通しだった。
それより私は、夏希が
加藤のことを優也と呼んでるとこが気になった。
加藤は女子と仲良いけどあんまり名前で呼ぶ人はいない。
むしろ夏希くらいだと思う。