【短編】先生、好きでした。
ゆっくりと深呼吸をし、ドアを開けようとしたときだった。
ピアノの音が聴こえた。
聴いたことがある曲だった。
でも、それは音楽の教科書にも載っていない曲だった。
ドアをゆっくり開け、覗き込むと先生がいた。
俺が探していた先生。
ピアノをひいていた。
その横顔は、いつもより優しくて綺麗だった。
「あら、松木くんじゃない。どうしたの?」
俺に気がついた先生が、ピアノを弾いていた手をとめ、ゆっくりと立ち上がる。
.