【短編】先生、好きでした。


そう言うと、先生は笑顔で頷いた。


黒板のメッセージみたいに、

『結婚おめでとう』

なんて言えない。


ガッカリしたとかショックだとか、そんな感情でもなかった。



「……私もね、みんなと今日でここを卒業するのよ。」



先生がさっき弾いていた曲は、人気歌手のウェディングソングだった。
弾いていた横顔がいつもより優しくて綺麗だった理由がわかった。



「松木くんも、メッセージ書きに来てくれたの?」


笑顔でそう言う彼女。

書くことも思いつかないのに、俺はゆっくりとチョークを手に取った。



< 4 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop