【短編】先生、好きでした。
そう言うと、先生は笑顔で頷いた。
黒板のメッセージみたいに、
『結婚おめでとう』
なんて言えない。
ガッカリしたとかショックだとか、そんな感情でもなかった。
「……私もね、みんなと今日でここを卒業するのよ。」
先生がさっき弾いていた曲は、人気歌手のウェディングソングだった。
弾いていた横顔がいつもより優しくて綺麗だった理由がわかった。
「松木くんも、メッセージ書きに来てくれたの?」
笑顔でそう言う彼女。
書くことも思いつかないのに、俺はゆっくりとチョークを手に取った。
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