割り切りの恋人たち
 暖かい春風が全てを包み込む。
 俺はその風の中ひとりの女性と出会うことになった。
 それも割り切りで……。

 北武線、大道寺駅前の券売機の前での待ち合わせ。
 俺はふと思い出していた。
 そう言えば昔、よくここの改札を利用していたなと。
 待ち合わせ時刻は午前11時。
 平日の昼間。
 俺は今日、有給をとり仕事を休んでいた。
 携帯のメールに先方からメールが届く。
「すみません……30分ほど遅れます」とのことだ。
 だから俺は「焦らずにお越しください」と返信した。そしたら直ぐに返信が返って来た。
「ありがとうございます」と。
 俺はかれこれもう40分近く待っている。
 待ち合わせ時刻の15分前には到着していたからだ。
 北武線の改札次々と人々が出てくる。
 そんな中、背の高めの女性が俺に向かい近づいて来る。
「直行さんですか?」
「あっハイそうですけど。弘美さんですよね?」
 俺がそう答えると「ええ」と言いながら笑顔をのぞかせた。
 そして弘美さんが俺の顔をジッと見つめている。
「もしかして……直行?」
「えっ、弘美って……」
 俺はビックリした。
 なぜなら今俺の目の前にいるのは紛れもなく、かつて付き合っていた彼女の弘美だったからだ。
 
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