割り切りの恋人たち
 18年ぶりの再会。
 あの当時はまだ自動改札ではなかった。
 俺はいつもこの駅の改札で弘美と別れていた。
 弘美はブレザーの学生服にポニーテールをしていた。
 俺はポニーテールが大好きだった。
 だから弘美のポニーテールに惚れていた。
 いつもこの改札の前で口づけを交わしお互いに分かれていた。
 弘美は改札で駅員さんに定期をみせて中に入る。そしてくるりと反転して、「じゃあね」といいながら、人の波に逆らうことなく、ホームへと続く階段を降りて行く。
 俺は弘美の姿が見えなくなるのを確認し、その場を後にしていた。
 この場所はそんな思い出深い場所だった。
 人の出会いは不思議なものだ。
 まさかこんな偶然があろうとは。
 そう言えば、3年ぐらい前にとあるオフ会に参加した時に、疎遠になっていたかつての同級生と再会をしたことがあった。
 あの時も人の出会いというものを不思議に感じていた。
 本当に人の出会いとは、不思議だ。
 かつては結婚まで誓い合ったふたり。
 だがふたりは結ばれないまま、辛い別れをした。
 あれから18年の歳月が過ぎていた。
 弘美はすっかりと大人の女性になっていた。そして少しばかり老け込んでいた。口元の皺がなんともいえない。
 弘美は俺に向かいずっと微笑んでいた。
「おっさんになったな」
「おめぇーだって、おばちゃんになったじゃねぇーかよ」
「誰だっておばちゃんになるんだよ!」
 と弘美はそう言いながら、俺の右足の太ももに軽く左足で蹴りを入れてきた。
「いでぇー!。骨折が折れたぁー」
 俺はそうおどけてみせた。
 すると弘美は手を叩きながら爆笑していた。
 あの頃と変わらないふたりがそこにいた。
< 3 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop