割り切りの恋人たち
 あの頃の俺たちは怖いもの知らずだった。
 そして必ず結ばれると信じていた。
 だがしかし……。
 ふたりは、結ばれずに終わってしまった。
 俺はこの道を歩いていて、そんなことを思い出していた。
 俺たちは学校が互いに違う地区にあった。
 その為、その中間点あたりでいつも会っていた。
 それがこの街だった。
「駅前やこの道もだいぶ変わったね」
 弘美がそう言った。
「そうだな」
 と、俺は答えた。
 ふたりは駅の裏通りにあるラブホテルに入った。
 この場所は昔からあまり人通りの少ない裏路地で、車一台が通れるぐらいの道幅だ。
 ホテルの2階にエレベーターで上がる。
 すると正面に鉄の扉がある。
 そこが俺たちが選んだ部屋だ。
 扉を開けると自動精算機が目の前にある。
 俺は今時珍しいなと思っていた。
 昔は自動精算機のあるラブホテルなんてざらだったけど、最近はめっきりみなくなっていた。
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