割り切りの恋人たち
 俺はその場に立ち尽くしていると、「何してんのよ、こっちみないでね」
「えっ何で?」
「恥ずかしいから」
 そういうと弘美は浴室に向かった。
 俺はブラックライトにした。
「なぁ弘美」
「何」
「風呂覗いたらどうする?」
「ぶっとぱーす」
 と弘美はあの頃と変わらない明るいノリで、そう言った。
 相変わらず明るい性格しているな弘美は、と俺は思っていた。
 俺は弘美が持ってきた、黒いバッグの中に、ふたりの諭吉の入っ茶封筒を入れておいた。
 4、5分ぐらいしたら弘美が浴室から出てきた。そして手際よくバスローブを身にまとう。
「次どうぞ」
 と弘美が言ったので俺は、シャワーを浴びに浴室に入る
 軽くシャワーを浴びて浴室から出てる。
 すると弘美は歯みがきをしていた。
 歯磨きをするのは、エチケットでもある。
 弘美が歯磨きを終えたので、次に私が歯磨きをする。
 その間に弘美はベッドに向かった。
 俺は歯磨きを終えベッドに向かう。
 弘美は布団をかけて瞳を閉じていた。
 俺は彼女の右隣に入る。
 弘美は瞳を閉じたまま動かない。
 まさに無抵抗の状態だった。
 俺は弘美の唇にそっと口付けをした。
 そしたら弘美の右目から一筋の涙が、頬を伝いこぼれおちていく。
 俺はその流れていく一筋の涙をみていた。
 ブラックライトで暗がりだが、その涙はあの頃と何も変わってなかった。
 ふたりはこの時を満喫した。
 裸で抱き合う。
 あの時と同じ匂い。
 そしてあの時と同じ感触。
 そう、ふたりが結婚を誓い合った、あの時と……。
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