溺愛中なんです。



私達は家に着くまで終始無言だった。


雨宮と一緒にいるのに

無言って……すごく変な感じ。


「よし、着いた!…じゃあな、また明日」


いつもの雨宮だったら

絶対こんなすぐに帰らないのに。


なんか…嫌だよ。


雨宮は私に背を向けて返ろうとした。


「待って…!」


私はとっさに雨宮の腕を掴んだ。

初めてかもしれない。

私から、雨宮に触れるなんて。


だけど


「…なーに」


雨宮はこっちを向かず小さな声で

返事をした。


「…何で……諦めるの…?」

「だから…さっき言ったじゃん?雪姫は俺のこと………あ゙ー!ダメダメ!」


雨宮はまだこっちを向かない。

なぜか寂しい気持ちになる。


「……俺、好きな奴の前では泣きたくねぇーの!最後くらいカッコつけさせろって」


雨宮はフッと笑って私の手を離した。


「…じゃーな」


最後まで、一度も振り返らず

そう言いながら手を振る。


何でよ……

意味わかんない……私。

何なの…この気持ち。



何でこんなに…寂しいの?



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