13回目の好き
「そう、…でもありがとうね。ホント私って教師らしくなくて…。」
そう笑いながら答えてプリントを探す。
棚にプリントはなく、物理実験のための道具部屋への扉を開けて中へ入る。
少し狭いこの部屋には、道具がしまわれている棚が回りに並び、真ん中にも棚が置かれている。
人ひとりが通れるほどの狭い通路。
奥へ行くとプリントが整理された棚を見付けて、恭先生が言っていたプリントを探す。
「あ!やっと見付けた!!…こんな所に…。」
そう独り言を呟きそのプリントの束を持ち、戻ろうと振り返った。
ドンっ!
「わッ!!」
すぐ後ろにいた本石君に思わずぶつかって後ろの棚へもたれる。
プリント探しに必死で本石君来てるの忘れてた…。
「ごめんね。本石君、大丈夫?」
背の高い本石君の表情を伺おうと見上げると、本石君と目が合う。
その何かを言おうとしている真剣な眼差しに
何だか不思議な空気になっていることに、ようやく気付き始めた。
「ちょ、ちょっと本石君?下がってくれないと…出られない…。」
慌ててそう言いながら目を反らし、本石君の靴が映る。