13回目の好き
海
けれど、杉野はそんな俺の表情をいつも伺って、「先生って本当に化学が好きなんですね」なんて言う。
誰にも、分かってもらえない、俺の親でさえ、俺が好きなものに気付けない。
何よりも、俺が突き放しても突き放しても、ぶつかってくる杉野。
どうしてそんなに強くいれるんだ?
昔の俺にないものを持ってる杉野に、心を掻き乱されていた。
けれど、何故だろうか?
高木先生の一言で…俺は、杉野が本当に伝えたかった言葉がハッキリ分かった。
杉野の心を見付けたんだ。
杉野:「海だーーー!」
その声にハッとして、目を輝かせて叫ぶ杉野に思わず笑いながら、車を駐車させると
杉野は勢いよく飛び出した。
その後ろ姿に、重ねてはいけないあの姿を映し出した。
「杉野!」
思わず呼び止める。
ザザーンッと耳に届く波の音は、あまりにも恐ろしく、何かを訴えるかのように聞こえてくる。
立ち止まった杉野が笑顔で俺の方へ振り返る。
杉野:「三浦先生、来て下さい!」
「あ、ああ…。」