13回目の好き
そのパイプ椅子は、いつも杉野が座っている。
杉野は、ほぼ毎日来るから、置きっぱなしにしていた。
少し頭を悩ませる。
最近俺はどうしたんだ?
杉野のことばかり考えてしまう。
心の中で、"駄目だ"と何度もその答えを抑えつける。
「高木先生、…吉崎は生徒だった時…好きになったんですよね?」
何を聞いているんだ俺は…。
高木先生:「ええ。」
普通に答える高木先生にまた驚きつつも
「抵抗はなかったんですか?…教師として、あってはならないことだと…。」
高木先生:「…なかったと言えば嘘になるかもしれないが…、俺には初めてだったんで、そんなこと考えてる余裕もありませんでした。」
ふっと笑って高木先生はプリントから目を離して答える。
高木先生:「好きになってしまった。それ以上何もありません。教師と生徒の恋愛が禁じられていても、本気だった。俺には関係なかった。」
「そうですか。」
フッと俺は、高木先生から視線を外し、コーヒーを飲む。
高木先生:「良い奴でも見つけました?」
にっと笑う高木先生に思わず、コーヒーから口を離す。