13回目の好き



俺の初恋は高校生だった。大好きだった。あの夏のことを後悔しても時は過ぎ、人はまた新たに恋をする。


それに気付いたのは吉崎と出会った時だった。

けれど叶わなかった。




「よく考えれば初恋なんて、早いも遅いもありませんよね。」



高木先生:「…まぁ俺みたいなのは稀だな(笑)…………今でも、奈緒のこと想ってますか?」



今野にも聞かれたその言葉。

あの時は、何も見えなかったが…あれから少しずつ考えてみれば、答えというものがハッキリとしてきた。




「…。……いえ。何だか、高木先生のそんな話を聞いてホッとしましたね。俺はずっと、吉崎を想う気持ちは誰にも負けないと、ひとり思っていて…。」


けれど…


「最後に伝えられずに終わってしまった時点で、高木先生に負けていた…。理由や言い訳を頭に並べて、引きずっていただけだってことに今、ようやく気付きました。」


高木先生:「……。」



「過去の自分を追憶し、何度も吉崎への想いを重ね……。過去に縛られた俺は…何かとても、無駄な時間を過ごしてしまったのかもしれない…。」



諦められなかった俺の方こそ情けない…。






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