ある夏の物語
夏休みも目前。
みんな暑い気候にだらけきっている。
それはあたしも例外ではなく、今も机に突っ伏している。
ひんやりとした天板が気持ちいい。
あたしは目を開けて、こっそりと美鶴を窺った。
白いシャツが、太陽に反射している。
相変わらずの長髪(とはいっても肩にはついていないが)のくせに、その横顔は涼しげだった。
あたしはというと、髪を結ってポニーテールにしているのに、暑くて汗だくだ。
あれから、一度も美鶴はあたしに触らない。
学校で顔を合わせたときもいつもと変わらなかった。
そしてその状態は今も続いていて、さりげなくあたしをイラつかせている。
破廉恥ながら、もう一回キスしてほしいなんて思ったり。
そんな自分が恥ずかしくて、きっと美鶴を睨んでみた。
…でもやっぱり好きだなぁ。
さらさらと風に揺れる髪を、梳いてみたい。
あの日、髪を指に絡ませてキスに没頭して以来、あの髪には触っていない。
と、美鶴がこっちを振り向いた。
目があって、首を傾げられる。
…あぁ、もう。
可愛いじゃないですか。