ある夏の物語
いーっ、と歯をむき出してやると、美鶴はこらえきれなかったようでぷっと吹き出した。
くっくっと口元を押さえて立ち上がり、あたしの机の横を通り過ぎ際、「可愛いよ。」と囁いていく。
あたしはかあっと赤くなった。
今、可愛いって言った?
…なんだか初めてな気がする。
あの日から一度もそういうことをしなかったくせに、今になってあたしをときめかせる。
ずるい、と思った。
美鶴は、ずるい。
いつもいつも、自分は優位な立場を崩さない。
焦らされているのは、あたしだけだ。
教科書を抱えて戻ってきた美鶴は、今度は何もしなかった。
…期待外れ。
あたしは悔しくなって、俯いた。
くっくっと口元を押さえて立ち上がり、あたしの机の横を通り過ぎ際、「可愛いよ。」と囁いていく。
あたしはかあっと赤くなった。
今、可愛いって言った?
…なんだか初めてな気がする。
あの日から一度もそういうことをしなかったくせに、今になってあたしをときめかせる。
ずるい、と思った。
美鶴は、ずるい。
いつもいつも、自分は優位な立場を崩さない。
焦らされているのは、あたしだけだ。
教科書を抱えて戻ってきた美鶴は、今度は何もしなかった。
…期待外れ。
あたしは悔しくなって、俯いた。