ある夏の物語
「よかったよ、そんな勇気なくて。
見つかってくれてよかったよ…。」



ぎゅっと、美鶴に抱きつく。



「馬鹿だよね、郁は。
お人よしだよね、ほんとに…。」


「駄目?」


「ううん、そのおかげで俺、頑張れる…。」



美鶴がのしかかってきた。



…泣いてる?



「なんで、母さん死んじゃったのかなぁ…。」



小さい声だったけど、悲痛な叫びだった。



あたしは目を閉じて、美鶴の背中をさする。



考えてみれば、美鶴はずっと前からヘルプを求めてたのかもしれない。



一歩引いた構えも、進路のことも。



無意識のうちにだしてたサインだったのかも。



苦しかったんだね、きっと。



あまり笑わなかったのは、笑わないんじゃなくって笑えなかったんだね。



「美鶴、好き。」


「嬉しいなぁ。」



あたしの肩に顔を押し付けているからか、くぐもった声。



「ね、コトバで愛してるをもらうと嬉しいでしょう?」


「うん…。」



嬉しいね、と美鶴は彼らしからぬ濡れた声で言った。
















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