ある夏の物語
あたしは勢いよく頷いた。
哀しそうな美鶴の頬に、雪が張り付いた。
それを拭おうともせず、美鶴はあたしを見つめていた。
「…それは、郁がそう思ってるからじゃないの?」
「あたしが?」
あたしは一瞬、美鶴が言ったことが信じられなかった。
あたしがそんなこと思ってるとでも?
「信じらんない。」
「かお…。」
「馬鹿じゃないの。
あたし、美鶴にそんなこと言われるなんて思ってもみなかった…!」
あたしが美鶴に対してこんなに怒ったのは、あれが初めてだったと思う。
もう何も話したくないと思ったのは、あれが初めてだったはず。
あたしは美鶴の顔を見もせずに、勢いよく立ち上がって背を向けた。
怒っているのに、胸が痛かった。
泣き出したいほど、つらかった。
あれは、怒りというより絶望だった気がする。
郁、と美鶴が立ち上がる音がした。
いつもなら、美鶴が発する「カオル」という音に立ち止らないなんてことはなかったのに。
あたしは速度を速めた。
帰って、気持ちを整理したかった。
哀しそうな美鶴の頬に、雪が張り付いた。
それを拭おうともせず、美鶴はあたしを見つめていた。
「…それは、郁がそう思ってるからじゃないの?」
「あたしが?」
あたしは一瞬、美鶴が言ったことが信じられなかった。
あたしがそんなこと思ってるとでも?
「信じらんない。」
「かお…。」
「馬鹿じゃないの。
あたし、美鶴にそんなこと言われるなんて思ってもみなかった…!」
あたしが美鶴に対してこんなに怒ったのは、あれが初めてだったと思う。
もう何も話したくないと思ったのは、あれが初めてだったはず。
あたしは美鶴の顔を見もせずに、勢いよく立ち上がって背を向けた。
怒っているのに、胸が痛かった。
泣き出したいほど、つらかった。
あれは、怒りというより絶望だった気がする。
郁、と美鶴が立ち上がる音がした。
いつもなら、美鶴が発する「カオル」という音に立ち止らないなんてことはなかったのに。
あたしは速度を速めた。
帰って、気持ちを整理したかった。