紳士的なLady*Another



***


地獄絵とは、まさにこの事だと思った。


夜道に男に襲われたり、薄暗い倉庫に監禁されるような悍ましい経験をした私だが、今回は違う。


男女の恋愛関係の縺れなんて、女側が泣けば解決しそうだなんて考え方そのものが、間違っていた。


「醜い」。


その言葉に尽きる。




泣き崩れた彼女は、世の女の子の味方である剣ちゃんの胸の中に。
人目も気にせずに泣く彼女に、剣ちゃんはホールドアップ状態。

隣では、鈴音ちゃんが彼女に軽蔑の視線を注ぎながら笑っている。




「もう泣かないで下さい。悪いのは全部兄なんですから」


女性の扱い方を既に熟知している剣ちゃんは、優しく背中をさすってあげている。
こんな状況でも落ち着いていられるなんて、さすがだ。



「剣、お前何慰めちゃってんの?馬鹿馬鹿しい」

「火に油を注ぐような事言わないで。ああ、大丈夫ですから。ほら、泣き止んで下さい」



兄妹の会話とは思えないな、と一番どうでもいい事を考えてたのは私だ。
そうでもしないと、この怒りを抑えられない。



「……っ剣夜と同じ顔で笑わないでーーー!!」

「はぁ?!」



理不尽な攻撃に、剣ちゃんも面食らったようだ。
可哀想に。


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