紳士的なLady*Another
私の幼馴染で、親友と呼べる剣ちゃんの3歳上のお兄さん。
それが、剣夜さん。
幼稚園の頃、幼い子供特有の、意味が分からない意地悪から守ってくれたのは、剣ちゃんだったけれど。
幼い子供であった私に、人としての基本的な事を教えてくれたのは、親や幼稚園の先生からではなく、剣夜さんだった。
ごく稀に剣ちゃんと喧嘩をした時、絶対に私が悪いと分かっていても、謝る気になれなかった私。
「剣ちゃんの方が悪い」と決めつけていた私の下らない幼稚な言い分を、全部聞いた上で謝るように促してくれた。
「これで剣とずっと仲良くなれないのは、嫌だろ?確かに剣も意地悪な事言ったと思うけど、剣も千波ちゃんも、相手に意地悪な事を言っちゃって嫌だなって思ったら、ごめんねって言おうね。剣、千波ちゃんが好きだから、もう仲良くなれないの嫌だって、今家で泣いてるよ。僕もついて行くから。ね?」
たった3つ上であるだけなのに、随分とオトナな事を言うものだ。
……なんて今は思っちゃうけど、あの時は剣夜さんの言葉が大きかった。
自分の非を認める事は、幼い子供にとって難しい事だし、一人の人間として、大切な事だ。
それを教えてくれた剣夜さんが、大きくて、優しくて。
だから私は、剣夜さんの容姿は勿論だけど、こんな所を好きになった。
――なのに。
「……っ何で、あんな人となの……!どうせ、剣夜さんの容姿に釣られてやって来ただけでしょぉ……っ、私……何で買い被っちゃったんだろ……。一番、隣に居たのは、私だって……、思ってたのにぃ……!」