紳士的なLady*Another
溜まりに溜まっていた鬱憤を、涙と共に晴らしてしまう。
こんな事で泣いてしまう自分が、負けを認めたようで、情けなくて。
友達である剣ちゃんと鈴音ちゃんにさえ、こんな私を見せたくなかったのに。
見ないでと、顔を俯かせて声を殺す。
それでも、久しぶりに流した涙は止まる気配がない。
うわ、私、今すっごくかっこ悪い。
唇を噛んで嗚咽を漏らさないようにすると、両側に温かい重さがのし掛かって来た。
「千波、今だけ泣いて晴らしな。私、千波のそういうとこ、かっこいいと思う」
「私たちに千波が気心許してるなら、いっぱい泣いて?千波を受け止めるくらいの器はあるつもりだから」
そんな事、言わないで。
今言われると、余計に涙が出ちゃう。
「二人とも、ありがと……。それと、ごめん。シャツ、びしょびしょにしちゃうと思う……」
「それぐらい平気だって!!ねぇ剣?シャツなんて洗濯すれば良いだけなんだし!ほーら、今日は泣きまくって明日からまた頑張っていこ!!」
「うん。千波、あんまりこういう事で泣かないからさ。おこがましいけど、こんな時に頼ってくれるの、結構嬉しいよ」
ああ、もう。
優しすぎだよ。剣ちゃんも鈴音ちゃんも。
これだから、二人のことが好きなんだよ。