紳士的なLady*Another
二人に抱きついておいおい泣いた後、やっとの事で涙が止まってくれた。
当分目から水分は出てこないだろう。
腫れぼったい目で前を見ると、案の定シャツの胸元がぐっしょりと濡れた二人が笑っていた。
「……すごい量の涙だったんだね」
困ったように笑ってみせると、剣ちゃんが急に立って部屋を出た。
僅かに聴こえる「今日くらい良いでしょ、お願い!」と、頼み込んでいる声。
「何してるのかなー?」
鈴音ちゃんとキョトンとしながら、お互いハンカチで濡れたシャツを軽く拭く。
大量の水分を吸収してしまったシャツの袖口が、しょんぼりと残念そうに項垂れている。
帰ったら洗濯しなきゃ、と思ったのと同時に、部屋のドアが開き、剣ちゃんがホッと安心したように笑って言った。
「二人共、今日は泊まっていきなよ。千波の家にはもう連絡入れておいたから。鈴音は大丈夫、かな?」
「大丈夫だよ。昨日からお母さん出張してるし」
「それなら良かった。そのままだとちょっと帰せそうにないから」
剣ちゃんが言った後に見ると、鈴音ちゃんの薄手のシャツからはうっすらと下着が透けてしまっている。
「ごめんね、鈴音ちゃん!」
「もう気にしなくていいって!むしろラッキーじゃん?剣の家に泊まれるから」
ケラケラと笑う鈴音ちゃんを見て、ちょっとだけいつもの彼女に戻ったのかなと安心する。
「じゃあ、適当にクローゼットから部屋着見つけて着替えてて。まとめて洗濯しちゃうからシャツはここに置いてね。私お風呂沸かしてくるから」
どこか嬉しそうにテキパキと動く剣ちゃんに思わず笑ってしまう。
今日は二人にどっぷり甘えてしまおう。