紳士的なLady*Another
その日の夜は長かった。
「こんな良い機会滅多にないんだから、色んなことぶっちゃけちゃおうよ!!」
と、鈴音ちゃんの一言から始まったぶっちゃけトークないし恋バナ大会。
秘密主義を貫くつもりだった私だけど、この二人には隠したくない。
そう思って、天井だけを見つめながらたどたどしいながらも、全部話した。
隣に居る剣ちゃんは、私がこんなことを話すことにびっくりしたようで、心底驚いた表情をしていた。
その横に居る鈴音ちゃんは、「そうなんだ」とだけ言うと、「難しいなぁ」と笑った。
だけど、その夜最も驚いたことは、鈴音ちゃんの話だった。
「私さ、壮紀に断られたんだよ」
「何を?」
「告白」
「本当に?!」
ガバッと勢いよく起き上った剣ちゃんに、「ほらほら落ち着いて」と、鈴音ちゃんと二人で寝かすと、鈴音ちゃんは切なそうな声で話し始めた。
話を聞く限り、小野寺くんが鈴音ちゃんのことを好きで好きで仕方が無いんだけど、今そのまま付き合ったら、鈴音ちゃんの気持ちを無視して手を出しそうだから、と簡単に予想がついた。
全くもって彼らしい考えだ。
だけど、すごく素直で優しい。
「でも私、残りの高校生活は壮紀以外の人を好きになることはないと思うよ。だから、今はそれでいいの」
言い切った満足感と、誰かに聞いてもらえた安心感で満たされているような、そんな声色。
最近の鈴音ちゃんの大人びた表情は、これが原因だったんだと、改めて理解する。
「私は喋ったよ。次は剣ねー」
剣ちゃんのほっぺたを人差し指で突きながら、鈴音ちゃんが剣ちゃんにバトンタッチ。
彼女はまさに剣ちゃんといったところだった。
「架月と?別にいつも通りだよ。付き合う前と今に何も変わりはないし。会話しない日が無くなったのが変化と言えば変化だけど」
……。
「剣らしいね……。もっとはしゃいでもいいと思うよ……」
「うん……」
剣ちゃんは「何か私おかしいことを言った?!」と、またガバリと跳ね起きたので、二人で元に戻した。
「剣ちゃん、鈴音ちゃん、おやすみ」
それだけ言って、瞼を閉じた。